ソニーが、ステージパフォーマンス向けのインイヤーモニター「IER-M500」を発表しました。国内発売は2026年8月28日、ソニーストア価格は19,800円(税込)で、市場想定価格も2万円前後。海外価格は119.99ドル/99ポンド/115ユーロです。レコーディング用マイクやミキシング用ヘッドホンを手がけてきたソニーが、ステージ用IEMというカテゴリーに本格参入する製品で、実際のモニターエンジニアとの共創で作られた点が最大の特徴です。
ソニーがステージ用IEMに本格参入する
ソニーはこれまでレコーディング用マイクやミキシング・マスタリング用のモニターヘッドホンを展開してきましたが、ステージパフォーマンス向けのインイヤーモニターは新規カテゴリーになります。長年のイヤホン開発ノウハウを、そのまま持ち込んできた格好です。
開発にあたっては、ロサンゼルスを拠点に活動するモニターエンジニアのNoel Edwards氏をはじめとする現場のエンジニアの意見が取り入れられています。スペックを積み上げて作った製品というより、「ステージで何が問題になるか」から逆算して設計された製品と見るのが正しそうです。
最優先は音質ではなく「耳から落ちないこと」
この製品でもっとも力が入っているのが装着安定性です。付属するフィッティングサポーターはXS/S/M/L/XLの5サイズ。耳の窪み(対耳輪)に引っかけて固定する方式で、ノイズアイソレーションイヤーピースはXS/S/M/Lの4サイズが同梱されます。合計20通りの組み合わせから自分の耳に合う設定を探せる計算です。
サイズ展開がここまで細かい理由として、ソニーは「耳が小さくIEMがすぐ外れてしまう」という女性アイドルの現場課題に向き合った経緯を挙げています。激しい振り付けを伴うパフォーマンス中にIEMが落ちるのは、単に不便というレベルではなく、演者がクリックもオケも聴けなくなる事故です。そこを起点に設計されているのは、実際にステージで使う道具として信頼できる指標だと言えます。
完全密閉構造による「電源のいらない遮音」
IER-M500は外気への経路をなくした完全密閉構造を採用しています。ノイズキャンセリングのような電子的な処理を使わず、物理構造だけで外音を遮断する設計です。イヤーピースにはWF-1000XM6と同仕様のノイズアイソレーションイヤーピースが使われており、薄い壁のポリウレタン素材で耳道に密着させることで遮音性と装着感を両立させています。
完全密閉には副次的な効果もあります。汗が内部に侵入する経路がないため、ステージで酷使しても壊れにくい。さらに音導管を広く取ったうえでフィルターを設けており、汗が詰まって音が出なくなった場合も本体を振るだけで対処できるとされています。ライブ現場でのトラブルシューティングまで想定した作りです。
5mmダイナミック1発、あえて中低域寄りのチューニング
ドライバーは5mm径のダイナミック型を1基。マルチBA構成が主流のこの価格帯にあって、シングルダイナミックという構成は珍しい選択です。ハウジング容積を最適化することで、小口径ながら低域の再生能力を確保しています。
- ドライバー:5mm ダイナミック型
- 再生周波数帯域:10Hz〜40kHz
- インピーダンス:16Ω
- 音圧感度:103dB/mW
- 質量:約6.9g(ケーブル含まず)
- ケーブル:着脱式・約1.6m・L型3.5mmステレオミニプラグ
音のチューニングは中低域寄りとされており、これには明確な理由があります。ステージ上では周囲からの回り込みで中低域成分が多くなるため、その中でも演者の耳に必要な音を届けるには中低域を厚めに出す必要がある、という考え方です。つまりこれはフラットなリファレンス機ではなく、爆音環境で使うことを前提に意図的に味付けされた道具です。
コネクターはMMCX準拠だが、社外ケーブルは非推奨
ケーブルは着脱式で、コネクターはMMCX準拠のソニー独自仕様です。ここは注意が必要で、ソニーは独自の耐久性基準を設けているため、一般的なMMCX対応ケーブルとの互換性は非推奨としています。リケーブル前提で選ぶ人は認識しておくべきポイントでしょう。
ステージ向けらしい配慮として、ケーブル端には赤と青のリングが入っており、暗いステージ上でも左右を瞬時に判別できます。カラーバリエーションはブラック、レッド&ブルー、クリアの3色。付属品はキャリングポーチとクリップです。
DTMユーザーにとっての使いどころ
ステージ用と銘打たれていますが、DTM環境でも活きる場面はあります。もっとも分かりやすいのはレコーディング時のかぶり対策です。遮音性の高い密閉型IEMなら、モニター音がマイクに回り込むリスクを大きく減らせます。ボーカル録りやアコースティック楽器の録音では実用的なメリットです。
一方で、これをミックスやマスタリングのリファレンスとして使うのは製品の狙いから外れます。中低域寄りのチューニングは爆音のステージで演者に音を届けるための設計であって、フラットな判断をするためのものではありません。ミックス用のモニター環境とは分けて考えるべき製品です。
発売日と価格
国内発売は2026年8月28日。ソニーストア価格は19,800円(税込)で、オープン価格ながら市場想定価格も2万円前後とアナウンスされています。海外では119.99ドル/99ポンド(VAT込)/115ユーロ。ステージ用IEMは10万円を超えるカスタムIEMも珍しくない世界なので、フィッティングサポーター5サイズと完全密閉構造をこの価格で用意してきたのは、かなり攻めた設定です。
予約や在庫は販売店ごとに動きがあるので、発売前に確保しておきたい場合は各ショップの状況を確認しておくとよいでしょう。

