ZEROLINE は、ミックス前に各トラックの平均レベルを測り、トリム値を一度で揃えるゲインステージング用ユーティリティです。
1. 概要
ミックスを始める前のゲインステージングにおいて、各トラックのレベルを揃える作業は重要でありながら手間がかかります。ZEROLINE は、トラックの音声を測定(LEARN)し、目標レベル(0 VU = -18 dBFS)に達するために必要なトリムゲインを自動で算出して固定するユーティリティプラグインです。
- 「常に追従しない」ワンショット測定: LEARN で測定した後はトリム値を固定(LOCKED)します。音量変化に自動で常時追従し続けるプラグインとは異なり、ゆっくりとしたコンプレッサーのように動作して演奏の抑揚を崩してしまうことがありません。
- VU(平均レベル)基準のレベリング: 人間の耳の感覚に近い平均レベル(0 VU = -18 dBFS)を基準にトリムを合わせるため、自然で均一なゲインステージングが可能です。
- 安心のピーク警告: ピーク値そのものを揃えるのではなく平均レベルを揃えるため、ドラムなどのトランジェントにより出力ピークが 0 dBFS 付近(-0.2 dBFS 以上)に届く見込みのときは、画面上に
PEAK WARNING を表示して注意を促します。
- 直感的な画面設計: トリム前の入力レベルとトリム後の出力レベルを左右の VU メーターで常時監視でき、中央の大型 TRIM ノブで測定後の微調整も簡単に行えます。
- ゼロレイテンシー: 処理遅延(レイテンシー)は一切ありません。
2. 動作環境
| 項目 | 内容 |
| 対応 OS | Windows 10 / 11 (64bit)、macOS 11 以降(Apple Silicon / Intel) |
| プラグイン形式 | Windows: VST3 / Mac: VST3・AU |
| 対応ホスト | VST3 または AU 対応の DAW |
| 入出力チャンネル | モノラル / ステレオ |
| レイテンシー | なし (0 サンプル) |
| 画面サイズ | 720 × 480 px (固定) |
| 画面の言語 | 日本語 / 英語(OS の表示言語に合わせて切り替わります) |
3. インストール
インストール(Windows)
- ダウンロードした ZIP ファイルを解凍します。
ZEROLINE.vst3 フォルダを次の場所へコピーします:
C:\Program Files\Common Files\VST3\
- DAW を起動し、プラグインの再スキャンを実行します(DAW を起動したままコピーすると反映されないことがあります)。
Windows での警告について:
コード署名をしていないため、ZIP のダウンロード時にブラウザが警告を出すことがあります。その場合は保存を許可してください。解凍前に ZIP を右クリック→「プロパティ」を開き、下部に「セキュリティ: このファイルは他のコンピューターから取得した...」と表示されていたら、「許可する」にチェックを入れて OK を押してから解凍してください。
インストール(Mac)
- ダウンロードした ZIP ファイルを解凍します。
ZEROLINE.vst3 を ~/Library/Audio/Plug-Ins/VST3/ へ、ZEROLINE.component を ~/Library/Audio/Plug-Ins/Components/ へコピーします(~ はホームフォルダです。Finder の「移動」メニューから「フォルダへ移動」を選び、パスを貼り付けると開けます。フォルダが存在しない場合は新規作成してください)。
- ターミナル(アプリケーション → ユーティリティ → ターミナル)を開き、次の 3 行を 1 行ずつ貼り付けて Return キーを押します。
cd ~/Library/Audio/Plug-Ins
xattr -dr com.apple.quarantine VST3/"ZEROLINE.vst3"
xattr -dr com.apple.quarantine Components/"ZEROLINE.component"
- DAW を起動し、プラグインの再スキャンを実行します(DAW を起動したままコピーすると反映されないことがあります。Logic Pro などで AU が一覧に出てこないときは Mac を再起動してください)。
Mac でのセキュリティ警告について:
本プラグインは公証を受けていないため、上記のコマンドを実行しないと macOS が「壊れているため開けません」「開発元を検証できません」と表示し、DAW がプラグインを読み込みません。このコマンドはダウンロードしたファイルに macOS が付ける印を外すものです。アップデートでプラグインを入れ直したときも再実行が必要です。何も表示されなければ成功です。
アンインストール
【Windows】コピーした ZEROLINE.vst3 フォルダを削除してください。
【Mac】コピーした ZEROLINE.vst3 と ZEROLINE.component を削除してください。
4. 画面の見かた
ヘッダー帯(上端)
- ロゴ & バージョン: ウィンドウ左上にロゴとバージョン(
v1.1.0)を表示します。
InfoBar
- ヘッダーの直下に配置されています。つまみやボタンにマウスカーソルを合わせると、その機能の解説が日本語で表示されます。
LEVEL パネル
- IN メーター: トリム前の入力信号レベルを示す VU メーターです。
- OUT メーター: トリム適用後の出力信号レベルを示す VU メーターです。
- 目標線(緑色の線): メーター上の緑色の線は目標レベル(0 VU)を示します。
- CLIP 表示: メーター上部に配置されており、信号が -0.2 dBFS を超えると 2 秒間赤く点灯します。
- 基準表示: メーター下部に「0 VU = -18 dBFS」の基準レベルが表示されます。
TRIM パネル
- TRIM ノブ: トリムゲインを調整する大型ノブです(-24.0 〜 +24.0 dB、0.1 dB 刻み)。LEARN で自動設定された後、手動で微調整することもできます。
- LEARN ボタン: 入力レベルの測定を開始・終了するボタンです。
- 状態表示: 現在の動作状態や測定結果を 2 行で表示します。
- Ø(位相反転)ボタン: 出力信号の位相を反転(180度反転)します。
TARGET パネル / MATCH パネル(Pro 専用機能)
- 無料版 ZEROLINE では、TARGET パネルおよび MATCH パネルには「PRO」バッジが表示され、操作は無効化されています。これらの機能は上位版 ZEROLINE Pro でご利用いただけます。
5. LEARN の使い方
プラグインの挿入位置
ZEROLINE は、エフェクトチェーンの先頭に挿入してください。インストゥルメント(ソフト音源)トラックの場合は、インストゥルメントの直後、他のエフェクトよりも前に挿入します。
測定の手順
- DAW で曲の再生を開始します。
- ZEROLINE の LEARN ボタンを押します(状態表示が
LEARNING に変わります)。
- トラックの中で最も音量がしっかり出ている部分(サビなど)を再生します。
- もう一度 LEARN ボタンを押すか、DAW の再生を停止します。
- 自動的にトリムゲインが決定され、値が固定されます(状態表示が
LOCKED に変わります)。
測定のポイント:
測定時間に上限はありません。数秒程度でもトリムは決まりますが、時間が短すぎると測定結果がばらつくことがあります。また、静かなセクションだけで測定するとトリムが上がりすぎてしまうため、曲中で一番エネルギーのある箇所で測定してください。
測定対象はトリム前の入力信号です。LEARN の測定中に手動で TRIM ノブを回しても測定結果には影響しません。また、無音部分は自動で除外されます。
無料版 ZEROLINE の目標レベルは「0 VU = -18 dBFS」(平均レベル)に固定されています。決定されたトリム値は DAW のセッションに保存され、後から手動でノブを回して微調整することも可能です。
6. 状態表示
TRIM パネル中央の状態表示部では、1 行目に動作ステータス(色分け表示)、2 行目に補足情報や測定されたトリム値が表示されます。
- PLAY, THEN LEARN: 待機状態です。DAW を再生してから LEARN ボタンを押してください。
- LEARNING: 測定中です。2 行目に測定を始めてからの秒数が表示されます。
- LOCKED: 測定が完了し、目標レベルに合わせたトリム値が固定された状態です。2 行目に測った入力の平均レベル(例:
-5.0 VU)が表示されます。決まったトリム値は TRIM ノブで確認できます。
- PEAK WARNING: トリム値は固定されましたが、平均レベルを合わせた結果として出力ピークが 0 dBFS 付近(-0.2 dBFS 以上)に達する見込みであることを示しています。2 行目に出力ピークの見込み値が表示されます。
- OUT OF RANGE: 目標レベルに合わせるために必要なトリムゲインが調整範囲(±24.0 dB)を超えたため、上限または下限の端でトリムを止めた状態です。2 行目に止めた値が表示されます。
- NO SIGNAL: 測定可能な音声信号が検出されなかった状態です。トリム値は変更されません。プラグインの挿入位置や DAW の再生状態、トラックの出力先を確認してください。
7. 使い方のヒント
- 揃うのはミックスの下地:
ZEROLINE が揃えるのは、エフェクトに入る手前のレベルです。後ろに挿すコンプレッサーやサチュレーターが毎回同じくらいのレベルを受け取るので、設定やプリセットを使い回しやすくなります。全トラックが同じ平均レベルになるので、そのままではハイハットもボーカルも同じ大きさで鳴ります。トラック同士の音量バランスは、このあとフェーダーで決めてください。
- 「常に追従しない」理由:
音量に合わせて自動でゲインを変動させ続けるプラグインは、動作がゆっくりとしたコンプレッサーのようになってしまい、演奏本来の強弱やダイナミクスを損なう原因になります。ZEROLINE は LEARN で測定した値を固定(LOCKED)するため、楽曲本来のダイナミクスを保ったまま正確なゲインステージングを行えます。
- ピーク警告(PEAK WARNING)への対処:
ZEROLINE はピーク値ではなく耳の聴感に近い平均レベル(VU)を基準に調整します。そのため、アタックの強いスネアドラムやパーカッションなどでは、0 VU に揃えた結果としてピークが 0 dBFS 付近(-0.2 dBFS 以上)まで跳ね上がることがあります。DAW の内部処理は浮動小数点数なので、0 dBFS を超えてもすぐに割れるわけではありません。ただし後段の機材やプラグインによっては歪むことがあるため、気になるときは TRIM ノブを手動で少し下げてください。
- 位相反転(Ø)ボタンの活用:
ドラムのマルチマイキング(スネアのトップ/ボトム、キックのイン/アウトなど)やベースのライン/アンプ録音など、複数マイク・ラインの重ね合わせ時に Ø ボタンを押して位相を反転させ、低域の量感や音の太さを確認するのに便利です。
- バイパス操作について:
ZEROLINE 本体には BYPASS ボタンを設けていません。プラグインの効果をバイパスして比較したい場合は、DAW 側のトラックエフェクトスロットにあるバイパス機能をご利用ください。
8. 上位版 ZEROLINE Pro について
より高度なゲインステージングやミックスワークフローを求める方のために、上位版「ZEROLINE Pro」をご用意しています。ZEROLINE Pro では以下の機能が追加されます:
- TARGET パネル(測定ターゲットの自由な設定):
- 3 つの測定モード(MODE): 標準の
VU(平均レベル)に加え、配信や規格に合わせた LUFS(聴感上の統合音量・Integrated)、ピークの大きさで揃える PEAK(サンプルピーク)から選択できます。
- 目標レベル(LEVEL)のカスタマイズ: MODE ごとに目標値を自由に設定可能です(VU: -24.0 〜 -8.0 dBFS、LUFS: -36.0 〜 -10.0、PEAK: -24.0 〜 0.0 dBFS)。作業基準(-20 / -18 / -14 dBFS 等)に合わせた柔軟な調整が行えます。
- MATCH 機能(エフェクト前後の音量マッチング):
- 同一トラックのエフェクト前後に ZEROLINE Pro を 2 つ挿入し(ROLE IN と ROLE OUT、グループ A〜H)、OUT 側の MATCH ボタンで測ると、エフェクト後の音量をエフェクト前の音量に揃えて固定します。エフェクトと OUT を一緒にオン / オフすれば、音量差に惑わされずに音の変化を聴き比べられます。
- LEARN ALL 機能(全トラック一括測定):
- 1 つのインスタンスで
LEARN ALL を押すだけで、プロジェクト内に挿入されたすべての ZEROLINE Pro(ROLE OFF / IN)の LEARN を一斉に開始・完了できます。プロジェクト全体のゲインステージングをワンアクションで完了させることができます。
BOOTH ↗
9. 注意事項
- 本製品はサポートなし・現状渡しの無料配布(フリーウェア)です。
- ソースコードは非公開です。
- 本製品の著作権は Tonecraft Tokyo に帰属します。
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10. 免責事項
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- すべての DAW・OS・ハードウェアの組み合わせでの動作は保証しません。
- 本製品は予告なく仕様変更・提供終了する場合があります。
- ご利用は自己責任でお願いします。重要な作業の前にはプロジェクトのバックアップを取ってください。
11. ライセンス表記
- VST is a trademark of Steinberg Media Technologies GmbH.
- 本製品は JUCE を使用しています。