Tonecraft Tokyo — Stereo Spatial Delay

LOCUS DELAY

ユーザーマニュアル

LOCUS DELAY は、「鮮明さ」と「空間移動」を両立させたデジタルステレオディレイプラグインです。
HRTF(頭部伝達関数)に基づく 3D 定位、XY パッドによる座標指定、そして “Locus Move” による空間軌跡アニメーションで、エコーを “位置を持つ音” として扱う体験をヘッドホンリスニングに届けます。

1. クイックスタート

  1. 配布パッケージの LOCUS DELAY.vst3 を OS の VST3 フォルダにコピーします(Windows: C:\Program Files\Common Files\VST3\)。
  2. DAW を再起動するか、プラグインを再スキャンします。
  3. ディレイをかけたいトラックまたはバスに LOCUS DELAY を挿入します。
  4. 上部ヘッダーの Preset から用途に近いプリセット(全 100 件)を選びます。
  5. 中央の XY パッド のライムドットをドラッグしてエコー位置を操作します。
  6. TIME / FEEDBACK / MIX ノブで基本のディレイ量を調整します。
  7. ヘッドホンでの試聴推奨 — HRTF ベースの定位は特にヘッドホンで効果的です。

2. 画面構成

ウィンドウサイズは 860 × 560 px の固定サイズです。

ヘッダーエリア(上端)

  • ロゴ — 製品ロゴを左端に表示。
  • Preset — ファクトリープリセット 100 件 + ユーザープリセットから選択。
  • prev / next — プリセットを順送り / 戻しで切り替え。
  • SAVE — 現在の設定をユーザープリセットとして保存(白文字 = 常時有効)。
  • DEL — ユーザープリセットを削除(明るい赤 = 有効 / muted gray = 無効)。
  • BYPASS — プラグインをバイパス。5ms クロスフェードでクリックレス切替。

XY パッド(左パネル)

  • ライムドット (FOCUS) — エコーが実際にある空間位置。Locus Move OFF 時は XY 操作位置、ON 時はパターン軌跡上の現在地。
  • MOV ポインタ (パープル) — SC / LFO による変調後のオフセット位置。ライムドットとの差が閾値以下なら非表示。
  • 移動軌跡 — Locus Move ON 時、ライムドットの直近 24 点をフェード表示。
  • 横軸 (X) = 左右方向、縦軸 (Y) = 奥行き方向(-1=NEAR、0=CENTER、+1=FAR)。

左パネル・ボトム

  • FEEDBACK / MIX / OUTPUT GAIN の 3 ノブ。

右パネル・TIME セクション

  • TIME L / TIME R ノブ — L/R 独立ディレイタイム。
  • SYNC アイコン — BPM 同期の ON/OFF 切替。ON 時は 8 音符グリッドが表示される。
  • SYNC LINK — SYNC ON 時に L/R 音符を連動させるか独立させるか。
  • DELAY TYPE ボタン — DUAL / TAPE / MULTI の 3 種から選択。

右パネル・Sidechain / LFO セクション

  • AXIS 選択 — SC / LFO が変調する軸(X / Y)の選択。
  • SC DEPTH X / Y ノブ — 各軸の変調量(-100〜+100%)。
  • SC ATTACK / RELEASE — エンベロープフォロワーの時定数。
  • EXT SC — 外部サイドチェーン入力を使用するかどうか。OFF 時は内部 LFO で代替。
  • LFO ON — EXT SC OFF 時のサイン LFO 変調を有効化。
  • LFO RATE ノブ — LFO 周波数。SYNC ON 時は最寄りの音符 rate に自動スナップ。
  • UNI / BI — 片側変調(UNI)か両側変調(BI)。デフォルトは BI。

右パネル・Locus Move セクション

  • MODE ボタン — OFF / RANDOM / CIRCLE / SQUARE / EIGHT から選択。
  • SPEED ボタン — BPM 同期速度倍率(1/8x 〜 2x)。
  • RADIUS ノブ — パターン軌跡の半径スケール。

右パネル・OUTPUT VU メーター

  • 最終出力レベルの L/R VU メーター。

ヒントバー(最下段)

  • マウスホバー時のパラメータ説明を日本語で表示。

3. パラメータ詳細

メインパラメータ

パラメータ 範囲 デフォルト 説明
TIME L 1 〜 2000 ms 250 ms L チャンネルのディレイタイム。SYNC ON 時は音符インデックスで制御。
TIME R 1 〜 2000 ms 250 ms R チャンネルのディレイタイム。SYNC LINK OFF 時に独立設定可。
SYNC OFF / ON OFF ホスト BPM 同期の ON/OFF。ON 時は TIME が音符選択、LFO RATE も自動的に BPM にスナップ。
SYNC LINK OFF / ON ON SYNC ON 時、ON で L/R 同一音符、OFF で L/R 独立音符設定。
FEEDBACK 0 〜 90 % 30 % フィードバック量。90% が上限で発散防止。
MIX 0 〜 100 % 50 % Dry/Wet ミックス比。Dry は常に等倍で加算される。
OUTPUT GAIN -12 〜 +12 dB 0 dB 最終出力ゲイン。Dry/Wet ミックス後に適用。
BYPASS OFF / ON OFF 全処理をスキップ。5ms クロスフェードでクリックレス切替。

空間パラメータ(XY パッド)

パラメータ 範囲 デフォルト 説明
POSITION X -1.0 〜 +1.0 0.0 左右方向の定位(HRTF)。-1 が左、+1 が右。XY パッドで直接操作可。
POSITION Y -1.0 〜 +1.0 0.0 奥行き方向(距離減衰)。-1 が最近(減衰なし)、+1 が最遠。

SYNC 音符(SYNC ON 時)

Index 音符 倍率 (拍)
1 1/2 2.0
2 1/4D 1.5
3 1/4 1.0
4 1/8D 0.75
5 1/8 0.5
6 1/8T 0.333…
7 1/16 0.25
8 1/16T 0.166…

Sidechain / LFO パラメータ

パラメータ 範囲 デフォルト 説明
SC DEPTH X -100 〜 +100 % 0 % X 軸変調量。正で右方向、負で左方向。
SC DEPTH Y -100 〜 +100 % 0 % Y 軸変調量。正で奥方向、負で手前方向。
SC ATTACK 1 〜 100 ms 8 ms エンベロープフォロワーの追従速度。
SC RELEASE 10 〜 500 ms 120 ms エンベロープフォロワーの戻り速度。
EXT SC OFF / ON OFF 外部サイドチェーン入力を使用。OFF 時は内部 LFO で変調。
LFO ON OFF / ON OFF 内部 LFO 変調の有効化(EXT SC OFF 時のみ効果あり)。
LFO RATE 0.01 〜 20 Hz 1.0 Hz LFO 周波数。SYNC ON 時は最寄りの音符 rate に自動スナップ。
UNI / BI (MOD BIPOLAR) UNI / BI BI UNI = 片側変調(0 → +depth)、BI = 両側変調(-depth ↔ +depth)。

DELAY TYPE

モード 内容
DUAL L/R 独立ディレイライン。TIME L / TIME R で個別設定可。標準モード。
TAPE 実機テープ風のゆらぎとウォームな高域ロールオフが加わったディレイ。
MULTI TIME を 4 分割した位置で徐々に音量が大きくなるタップを重ねる、クレッシェンド状のリズミカルなディレイ。

Locus Move パラメータ

パラメータ 選択肢 デフォルト 説明
LOCUS MODE OFF / RANDOM / CIRCLE / SQUARE / EIGHT OFF エコー位置の自動軌跡。
LOCUS SPEED 1/8x / 1/4x / 1/2x / 1x / 2x 1x BPM 同期のアニメーション速度倍率(1x = 1 サイクル / 小節)。
LOCUS RADIUS 0.0 〜 1.0 0.9 軌跡の半径スケール。0 で中心点固定、1 で最大。

4. 特殊機能

HRTF 空間定位

XY 座標を 3D 空間の定位に変換します。

  • 方位角: POSITION X で左右方向(-1 が左、+1 が右)。
  • 距離: POSITION Y で奥行き(-1 が近く、+1 が遠く・減衰)。
  • ヘッドホン試聴で最大の効果が得られます。

Locus Move(空間軌跡アニメーション)

エコー位置を自動的に動かし、空間で “泳ぐ” ディレイを実現します。BPM に同期した動き。

モード 軌跡
RANDOM 1 サイクル毎にランダムな点へジャンプ
CIRCLE 円軌道
SQUARE 矩形軌道(時計回り)
EIGHT 8 字軌道

Sidechain / LFO 変調

  • EXT SC ON: 外部サイドチェーン入力に反応して POSITION を変調。キックでエコーが空間を移動。
  • EXT SC OFF + LFO ON: 内部 LFO で POSITION を周期的に揺らす。
  • UNI / BI で片側 / 両側変調を切替。デフォルトは BI(両側)。

5. ファクトリープリセット

全 100 件、以下 8 カテゴリに分類されます。

カテゴリ プリセット数
Drums 15 Kick Punch / Snare Slap / Overhead Wide
Bass 10 Pick Muted / Slap Tight / Finger Warm
Guitar 15 Rhythm Clean / Lead Warm / Acoustic Sparkle
Keys 15 Piano Warm / E.Piano Vintage / Organ Swirl
Synth 20 Lead Dark / Pad Wide / Arp Fast / Bass Wobble
Strings 10 Cello Warm / Ensemble Wide / Section Lush
Vocal 10 Lead Slap / Harmony Wide / Cave Echo
Perc 5 Shaker Tight 他

6. 使い方のヒント

エコーを空間に配置する

  • XY パッドのライムドットをドラッグして、エコーが聞こえる方向と距離を指定します。
  • POSITION X=+1(右端)、POSITION Y=+1(奥)の組み合わせで「右奥に遠く残響する」効果が得られます。
  • ヘッドホンで試聴するとよりはっきり分かります。

エコーを空間で動かす(Locus Move)

LOCUS MODE:   CIRCLE
LOCUS SPEED:  1x
LOCUS RADIUS: 0.9
FEEDBACK:     40 %
MIX:          50 %

BPM 120 の曲で 1x を選ぶと、1 小節で 1 周する円軌道になります。EIGHT にするとリサージュ図形の動きで、より複雑な空間軌跡になります。

キックに反応して空間移動(Sidechain)

EXT SC:       ON (DAW でキックトラックを SC 入力にルーティング)
SC DEPTH X:   +60 %
SC DEPTH Y:   -40 %
SC ATTACK:    5 ms
SC RELEASE:   200 ms
UNI / BI:     BI

キックが鳴るたびにエコーが右に飛んで手前に寄る動きになります。ボーカルにかけると独特の存在感が出ます。

Tape モードで温かみを加える

DELAY TYPE:  TAPE
TIME:        375 ms
FEEDBACK:    35 %
MIX:         45 %

高域が柔らかく丸まり、ゆらぎのあるヴィンテージなテープディレイの質感が得られます。

BPM 同期したシンコペーション

SYNC:        ON
SYNC LINK:   OFF
TIME L:      1/8
TIME R:      1/8T(3 連)
FEEDBACK:    50 %

L/R で異なる音符を設定すると、左右でリズムが噛み合うような複雑なエコーパターンが生まれます。

7. トラブルシューティング

  • XY パッドを動かしてもエコーが左右で同じに聞こえる
    • スピーカーで聴いている場合、HRTF の効果は弱まります。ヘッドホンで試聴してください。
    • BYPASS が ON になっていないか確認してください。
  • 音が出ない / 無音になる
    • BYPASS が ON になっていないか確認してください。
    • MIX が 0% になっていて Dry が聞こえているだけの可能性があります。
  • 外部 SC が機能しない
    • DAW 側でサイドチェーン入力バスを正しくルーティングしているか確認してください。
    • EXT SC が ON になっているか確認してください。
  • DAW プロジェクト再読み込みで設定が戻らない
    • DAW の “Save Project” を実行してから閉じているか確認してください。
    • Standalone 版は終了時に自動保存しません(JUCE の仕様)。
  • Locus Move の動きが想定よりも遅い / 速い
    • DAW の BPM 設定と LOCUS SPEED を確認してください。1x = 1 サイクル / 小節が基準です。
  • フィードバックで発散しそうで不安
    • FEEDBACK は最大 90% で制限されているため、発散しにくい設計です。

8. オートメーション用パラメータ ID

パラメータ ID 内容
ld_time TIME L(ms / 音符 index)
ld_time_r TIME R(ms / 音符 index)
ld_sync SYNC ON/OFF
ld_sync_link SYNC LINK ON/OFF
ld_feedback FEEDBACK(%)
ld_mix MIX(%)
ld_gain OUTPUT GAIN(dB)
ld_pos_x POSITION X(-1.0 〜 +1.0)
ld_pos_y POSITION Y(-1.0 〜 +1.0)
ld_sc_depth_x SC DEPTH X(%)
ld_sc_depth_y SC DEPTH Y(%)
ld_sc_attack SC ATTACK(ms)
ld_sc_release SC RELEASE(ms)
ld_ext_sc EXT SC ON/OFF
ld_lfo_on LFO ON/OFF
ld_lfo_rate LFO RATE(Hz、SYNC 時は音符)
ld_mod_bipolar UNI / BI
ld_delay_type DELAY TYPE(0=Dual, 2=Tape, 3=Multi)
ld_locus_mode LOCUS MODE(0-4)
ld_locus_speed LOCUS SPEED(0-4)
ld_locus_radius LOCUS RADIUS(0.0 〜 1.0)
ld_bypass BYPASS ON/OFF